こんにちわ。
突然ですが、みなさん「放課後等デイサービス」って言葉を聞いたことがありますか?
初耳~!という人のためにご説明すると・・・
■放課後等デイサービスとは?
放課後等デイサービス(ほうかごとうでいさーびす)とは、児童福祉法を根拠とする、障害のある学齢期児童が学校の授業終了後や学校休業日に通う、療育機能・居場所機能を備えた福祉サービス。「障害児の学童保育」とも呼ばれる。略して「放デイ」。
出典:wiki
数年前には怪しいコンサルが「儲かりますよ!」って起業セミナーとかでよく言っていたというのを聞きましたw
なので放課後等デイサービスのフランチャイズ事業を展開している業者さんもいくつかあったりしますね。
数年前までは事業所も少なく、施設をオープンすれば利用者がすぐに集まり「儲かる」事業所が多かったのも事実ですが、昨今では平成30年の法改正により収益が大幅に減っている事業所も多いようです。
そこで、今回は放課後等デイサービス3店舗を実際にゼロから立ち上げ経営している経験から「放課後等デイサービスの経営面、主に収益(ぶっちゃけ儲かるの?)」という側面から今後の放課後等デイサービスの未来のことまで考察したいと思います!
※
前提として複数事業(福祉以外)を展開している法人の経営者の視点になります。
放課後等デイサービスの売上の90%は公費で賄われている。
前提として「放課後等デイサービス」は障害福祉サービスになります。
よって事業を開始するには各自治体に申請書を提出し、一定の条件をクリアし認可を得なければなりません。
そして、ご存知の通り売上の90%は国と自治体から入ってきます。
補足:認識として構造上正しくは国から90%直接お金が入ってくるワケではない
正確には国や自治体から直接お金が事業所に入ってくるって認識は理論上ちょっと違いますが。。。(そりゃ、法人口座にはまとめて入金されるんですよ・・・)
法定代理受領として便宜上利用者の代わりに事業所がサービス利用料を受け取っているという構造が正しいかと思います。
そのため、利用者は事業所から毎月15日以降くらいに前々月に利用した分の「代理受領通知」なる書類をもらうかと思います。
これは、利用者に代わって事業所が給付費を確かに受領しました。。。という書類です。
よって正しくは。。。
・国、自治体→利用者
に給付費(90%)が支払われている
・利用者→放デイ
に利用料(90%+10%=100%)が支払われる。
・国、自治体→利用者
に給付されている給付費(90%)を便宜上、利用者に代わり事業所が請求し受領している
というのが超簡潔な構造上のお金の流れになるかと思います。
この「法定代理受領」という仕組みは、運営上は便利なのですが、利用者、放デイの事業所ともども意識という面では良くない方向に働いているかと思います。
利用者は本来支払うはずの金額を把握していない人が多いだろうし(すいません、ここは完全な個人的見解です)、事業所は事業所で利用者に実際に請求する金額は「上限負担額+おやつ代」などでしょうから、利用者さまからサービス利用代(給付費含む)を
いただいている感覚を失いがちです。
このあたりをお互いに再認識し直せば業界がよりよい方向に進むと思うワケです。
はい、で話を戻しますw
利用者の実費負担額は1割
財源は上述した通り90%は公費となっており、各事業者はサービス提供月の翌月10日までに請求書を作成し、国保連に「えい!!」と請求書を送っているのです。
そのため、利用者の実費負担額は1割です。
しかも・・・
収入(正確には課税所得)に応じて実費で負担する金額の上限が定められています。
このあたりは福祉サービスゆえんですよね。
要するに所得が低くてもサービスが受けられるように費用負担が設計されています。
話はそれますが、請求書の作成は意外とめんどくさく、複数の事業所を利用している児童の場合は上限管理という作業が発生します。
上限管理とはなんぞや!?という人はググってください。
まぁこの記事を見ている人の多くは既存の事業所を経営されている方でしょうから分かるはず。
で、この上限管理という作業には各事業所間で利用者の利用実績を報告し合うのですが、多くの事業所はこのデータのやり取りをFAXで行っています。
まじで信じられません!!
福祉のお仕事の給与が安い!ってよく言われていますが、もちろんその収益構造(売上の天井が決まっている)にその多くが依拠するのは否定しませんが、あまりに生産性が低すぎるのも1つの原因だと思います。
とりあえず、厚生労働省には放課後等デイサービスの事業所にFAX禁止令を出してほしいところです。
話をもとに戻すと、このように放課後等デイサービスの売上の90%は介護保険で賄われており、残りの10%が上限ありの利用者負担になります。
放課後等デイサービスの月の売上は?
では実際に放課後等デイサービスを運営するといくら売上がたつのでしょうか。
法律が変わったり、施設によって加算状況が異なったりで一概に言うことはできませんが、多くの事業所は1人あたり約10000円の売上と見て大きくハズレてはいないでしょう。
なので単純計算すると、
- 日曜休み
- 祝日も営業している
- 1日平均10人通所している
と仮定すると
月の売上は約260万になります。(10人×26日)
※
学校がある日とない日で単価が異なりますし、まぁあくまで目安です。
なので、結論として上記の条件であれば
放課後等デイサービスの月の売上は1店舗あたり約260万ほどになります。
放課後等デイサービスの売上・ビジネスモデルには限界がありすぎる・・・
売上は【単価】×【契約数】×【回転率(1人あたりの月の利用数)】なので、各要素を増やせばいいやん!ってことになりますが普通のビジネスと違うところがココなのです。
なぜか?
まず【単価】は保険内でやる場合、勝手に各事業所で増やすことができません。。。
出来ることといえば加算を出来るだけつけることくらい。まぁ微々たるものです。
では
【契約数】×【回転率(1人あたりの月の利用数)】はどうでしょうか?
要するに極論を言えば1日あたり100人利用者集めれば売上は10倍になるよね?って発想が通用するのか?
答えはもちろんNoです。
というのも、放課後等デイサービスには減算という考え方が存在しており、国が定めた基準に外れた場合が売上が減ってしまいます。
利用者数に関する減算としては
- 1日あたりの利用者数が15人を超えたらその日は30%減算
- 過去3ヶ月の1日あたりの利用者平均数が13人を超えた場合は売上30%減算
というモノがあります。
なので
1日14人平均だったとしても
売上は約364万(14人×26日)
から30%減算して
約254万になっちゃいます。
しかも常識的に考えて利用人数が増えるので必要経費も増加するハズ(人件費、消耗品、送迎に使う車など。。。)なので利益はもっと圧迫されると予想されます。
そのため、放課後等デイサービスの売上は260万くらいが天井になると思って間違いないでしょう。
※
厳密には
月30日営業し、1日平均13人を維持した場合390万くらいの売上を叩き出すことは可能です。
しかし、上述した通り、利用者が増えるとサービスのクオリティを維持するためにはコストもかかるハズでここを考えると390万というのはあくまで机上の空論かと。
人件費を圧縮して1日平均数を上げる戦略をとる事業所が利用者に選ばれるとも思えませんし。。。
放課後等デイサービスの経費、コストはどれくらいかかるのか?
【利益】=【売上】-【費用】なので
次は【費用】を見ていきましょう。
もうぶっちゃけると放課後等デイサービスが儲かるかどうかは、開所前にこの【費用】をどのように設計するかにかかっています。
まずは固定費
大きく分けるとこんな感じでしょうか・
- 家賃
- 人件費(法定福利費含)
- 車代
- ガレージ台
- ガソリン代
- その他(通信費、顧問税理士、請求ソフト使用代、保険など)
変動費は
- 活動費
- 消耗品費
などでしょうか。
実際に放デイの月あたりのコスト・費用とは?
では具体的に数字を当てはめていきましょう。
・家賃
→
20万円
・人件費(法定福利費含)
→
150万円
(1日平均スタッフ6人で回す)
(正社員は4名※平均給与20万、アルバイトは6名※時給980円)
※
某フランチャイズの説明資料で人経費80万とかで計算している事業計画書を見たこともありますが実際そんなんで運営できるワケはないでしょうね。
そもそも求人情報を見ていると放デイの給与水準も上がってきていますし、質の良い人材を採用しないと利用者が集まらない、離れていく・・・って事態にもなりかねませんので。
・車代
→
12.6万
(軽自動車×1、フリード×2※リース、保険込み)
・ガレージ台
→
6万
(3代分)
・ガソリン代
→
5万
・その他(通信費、顧問税理士、請求ソフト使用代、保険など)
→
7万
・活動費
・消耗品費
→
7万
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ここまでを合計すると
207.6万円
放課後等デイサービスの月の営業利益は50万くらいでれば御の字!?
では【利益】=【売上】-【費用】の式に当てはめて利益を求めていきます。
- 日曜休み
- 祝日も営業している
- 1日平均10人通所している
という条件の元では月の売上は約260万でしたね。(10人×26日)
よって
【260】-【207.6】=52.4万円
はい、ということで一般的な放課後等デイサービスの月の営業利益は約50万という数字になりました。
(そんなに大きくハズレていないはず)
でもって消費税はかかりませんが、法人税はもちろん支払う義務がありますので、そのことも考えると実質は
50万×0.75(法人税を25%として計算)で37.5万円になります。
ここから融資を受けている場合は返済します。
で、残金から役員報酬を支払うってモデルになるかと。
役員報酬を30万とったら法人としての利益は10万きっちゃいます涙
放課後等デイサービスの今後、生き残りの戦略とは?
ではこのような状況で放課後等デイサービスを運営している社長さんはどんな戦略を取ればよいのでしょうか?
これは
- 現在何店舗運営しているのか?
- 他に事業をやっているのか?
- 資本力はどれくらいあるのか?
など様々な変数により異なるので一概には言えません!というのがそもそもの答えなのですが、それではあまりにひどい突き放しなのでここでは一般的な具体例をしめすことにしよう。
コストを削減しつつ店舗数を増やしていくのが王道
基本的に放課後等デイサービス事業だけで利益を出していくためには
- コストを削減
しつつ
- 店舗を増やしていく
しかないかと思います。
ただし、どちらもデメリットありですのでこりゃまた一概には言えません。。。
とは言え、コスト削減っていっても限界があるので最終的にはこの事業だけで生き残っていこうと思うと現状維持に満足するか、店舗を増やしていくしかないのです。。。
放課後等デイサービスの今後について
未来のことは誰にも分かりませんので、このあたりは超絶個人的な見解になります。
まず、長期でみれば報酬単価は下がり、それに伴い売上は今より下がってくると思います。
人件費も上昇してくると思われます。(単純に労働人口が減少してくるので働き手不足と施設数増加の需要と供給の関係から)
よって単純に放課後等デイサービスの1店舗あたりの収益は今以上に厳しいものになるでしょう。
生き残るためには少なくとも3~5店舗くらいの多店舗経営
そのため、1店舗ないしは2店舗レベルで運営している法人は経営が非常に厳しくなってくると思われます。
(って上述した利益しか出ないのであれば事業として法人でやるレベルではないです。)
なので、生き残る事業所の条件は巷で言われているようにサービスの質とか差別化とか言うよりは、運営法人の資金力に依拠する可能性が高いと思います。
もっと具体的に言うと5店舗とか10店舗とか運営しているような事業所が圧倒的に有利になってくる気がします。
国もどっちかと言うと新規参入よりは既存で放デイを運営している法人に施設を増やしてほしいような舵取りをしているようにも思います。
(人員配置の基準など含め設立のハードルも上がってますし)
ただし、人材確保や固定費の上昇などのデメリットもありますし、集客や健全な運営のノウハウがない法人にはハードルが高いですし、そもそも既存で他の福祉事業をやっている法人以外でこの戦略をとるのはハードモードだと考えます。
(他に高収益な事業をやっているならアリかな。。。)
よって放課後デイサービスオンリーの多店舗展開はビジネス的に見て将来性はないと思います。
送迎をなくしてコストダウンを図るのはアリ
1、2店舗しか運営していない事業所が生き残る方法はコストダウン。
しかも大幅な。
これはもう送迎をなくしても1日平均10人以上利用者が集まる”なにか”を開発し、提供するしかないのでは?と思っています。
多くの事業所が抱えている問題の1つに送迎があるかと考えているので、これをなくせば送迎加算をさっぴいても車維持費、そして人件費を削減しコストを圧縮できるハズ。
そもそも、平日の送迎、正確には学校へのお迎えに向かうドライバー問題があり、それこそ人件費を圧迫している要因でもあるかと。
というのも、本当であれば1日10人ほどであればプログラムによってはスタッフ4名で見れるけど、学校へのお迎があるから6名は必要だよね。。。ってことです。
送迎をなくせば、コスト削減とサービスのクオリティアップが見込めるので収益は改善する可能性が高いと思います。
ただ、現実には送迎サービスを保護者さんが望んでいる場合が多く、これをなくしてライバル事業所より自分の放デイを選んでもらう強い”なにか”を作り出す必要はあるのですが。。。
チャレンジする価値はあるかと思いますがこちらもハードルは高そう。。。
しかし、実際に送迎なしで運営されている事業所さんは全国各所に存在しています。
夫婦で1店舗をきりもりするコンビニフランチャイズ方式
個人的にはコンビニフランチャイズ方式は生き残れると思っています。
要するに夫婦で放課後等デイサービスを運営するという方法です。
これは収益的にもアリかと思います。
仮に管理者と児童発達支援管理責任者を旦那が兼務し、保育士の奥さんが常勤で現場に入る。
極論を言えばもう1人名、人員配置基準を満たす人材を雇用すれば理論上は放デイが運営可能です。
よって「法人の利益」=「家庭の利益」と考えれば月100万くらいは残すことは可能かと思います。
よって夫婦2人、もしくは自分が会社の代表を務め、現場にも出る場合はこれはこれで個人商店レベルですが事業として成り立つとは思います。
元も子もないけど新規事業
放課後等デイサービスである程度安定して利益を叩き出していれば新規事業を立ち上げるのもよいかと思います。
というか、これが個人的には一番おすすめの戦略ではあります。
経営者に得意分野があればそれを生かした領域、なければ放デイとシナジーを図れる事業を行い、事業ポートフォリを少しずつ増やし規模を拡大していくのはアリかと。
具体的に言えば
- 児童発達支援
- 就労支援
などでしょうか。
ただ、結局のところこれらの事業は収益構造が放課後等デイサービスと同じなのでリスクヘッジにはなりえません。
よって個人的には真逆の収益構造をもった事業を行うのが理想だと思います。
※
ここで大事なのは業界が真逆といっているのではなく、収益構造が異なっていること。
番外編:個人負担額を増やす
これは事業所レベルで出来る施策ではないですが、1つご提案。
要するに、報酬単価を上げて、その増加分を100%実費負担額とするという考え方です。
福祉サービスですので賛否両論あるかと思いますが、利用者があまりにも利用料を支払っている感覚がないのでは?と個人的には感じています。
個人の所得によりけりですが月20なんにち利用して4600円、ことと場合によっては0円って。。。
個人の実費負担額を上げると、そもそもそんなに多くの人が放デイを利用しようと思わないだろうし、事業所の良い意味での淘汰にもつながるのでは?と考えます。
(今より利用料が上がっても今の事業所を利用したい!と思える保護者がどれくらいいるだろうか?また従業員側も負担額が少ないからといって日々の支援において疎かになっていることが多少なりともあるのではないだろうか?)
本当に必要としている人に適切な負担額で望んでいる最高のサービスを提供する。。。そのようなエコシステムを作り上げていく必要があるかと。
クオリティの高い良いサービスを受けようと思うと当然対価が必要で、まずはその認識から今一度始めよう!ということです。
まとめ.
平成24年児童福祉法改正以降、雨後の筍のように全国に乱立してきた放課後等デイサービスですが、各所で経営が立ち行かなくなり廃業、倒産する事業所が出てきております。
また、倒産とはいかなくても赤字、または経営が厳しい事業所は非常に多いと感じています。
今後の放課後等デイサービスの収益的な展望は暗いと思いますので、生き残るためには・・・
- 3~5施設くらいの多店舗展開(ちゅうと半端に2店舗くらい運営してるのが一番きついかも)
- 送迎をなくすなど大幅なコストダウンのアイデア
- 夫婦できりもりモデルでの運営
- 新規事業の立ち上げ
の4つが筆者が考える戦略になります。
ただ、前提としては放課後等デイサービスは儲かりません!!
(まぁどれくらい稼げば儲かった!と思うかは人それぞれですが)
儲かると思って参入すれば非常に痛い目にあい撤退することになるでしょう。
よって今から放デイを立ち上げようと思っている方は、事業の存在意義ややりがいが見いだせないのであれば参入するのを考えた方が賢明かもしれません。
今経営していて苦しいのであれば、撤退、売却というのも1つの選択肢かもしれません。(理由は業績が回復しても上述した収益ほどにしかならないため)
ただし、色々な事業を立ち上げたりやってきて思うのは放課後等デイサービスの経営は楽っちゃ楽です。(現場レベルではありません。あくまで経営的な目線です)
要するに事業の完成モデルがある程度見えているので、そこまでは普通に経営してれば半年くらいでもっていけるからです。
だから法改正以降、色々な会社が事業に参入したワケです。
誰が経営してもある程度成り立つような事業なので。
まぁ適当に経営・運営している事業所や利益目的で参入してきた事業所が、儲からないから撤退するという動きが加速すれば業界や利用者さんにとっては良いことかもしれません。
本記事は僕の超絶狭い経験則での記事ですので、他にアイデアなどあればコメント欄に記載いただければうれしいです。
個人的には儲からなくても、今以上に高収益構造にし、利益を従業員に還元し、それによりよりクオリティの高いサービスが提供でき、利用者さまに今以上に満足していただける。
だからさらに利用者さまが集まる。。。
というサイクルを全ての事業所で実現できるようにしていかなければ、残念ながら業界の未来は暗いと思っていますので。。。
放デイ事業をやっておられる関係者の方々、頑張っていきましょう!